コラム
系統用蓄電池とは?その役割と事業の可能性
再エネ発電の中で最近話題にあがるのが、「系統用蓄電池」です。
政府は手厚く支援し、民間もそれに呼応・収益構造を期待して再エネ発電所に隣り合わせる“蓄電所”を各地に設置し始めました。
この系統用蓄電池は、電気をためて再び使うという単純な利用だけが目的ではありません。
ビジネスモデルや事業の可能性について、本コラムで解説します。
[目次]
1.政府も手厚く支援する「系統用蓄電池」とは
2.系統用蓄電池のビジネスモデルと期待される役割
3.系統用蓄電池事業参入で築けるwin-winな関係の理由
4.大手企業が続々参入する「系統用蓄電池 事業」の事例
5.高まる長期脱炭素電源オークションへの期待
6.出力制御と系統用蓄電池の関係性
2月末から3月初めまで東京で開かれた再エネ関連の展示会は、ビッグサイト全体を使ったにもかかわらず久しぶりの大盛況でした。
中でも、会場にドンと置かれて存在感を示していたのが、新興パワーエックス社の蓄電池。
新興パワーエックスの蓄電池は、定格容量(電気をためる容量)が
およそ2.5MWh、20フィートコンテナに収納するという大規模なものです。
家庭用の蓄電池だと、数kWh程度なので、比較すると数十倍もの大きさということが分かります。
最近では、よくテレビCMや広告でも家庭用の蓄電池が宣伝されている機会が増えたため、
蓄電池自体は知っているという人も増えたと思います。
今回の系統用蓄電池の仕様用途は、ビジネスや事業用です。
読んで字のごとく、“系統につなげる”というところがポイントで、
それによって収益を得るチャンスが格段に増えることになります。
【電力市場で収益を得るビジネスモデル】
上図は、資源エネルギー庁が示した系統用蓄電池のビジネスモデルです。
電力市場は3つの市場の取引により構成されており、それぞれの市場の取引方法は異なります。
まずは上から3つ目の「kWh価値(卸市場)の利用」は、蓄電池にためた再エネの電気を、
電力取引市場の1番高い時に売ることで、利益を出す仕組みが基本となります。
太陽光や風力発電の急拡大によって、昼間を中心に市場価格が0.01円/kWhと超安値になることは珍しくなく、
さらに需要不足から出力制御が起き、せっかくの生み出した再エネ電力を
止める事態(電力廃棄)も全国的に常態化してきています。
【需給バランス改善への系統用蓄電池の活用】
次図は、2022年春の九州電力管内のある日のスポット市場の変動と出力制御の状況です。
0.01円の価格は8時間続き、4時間が出力を制御され電気が捨てられています。
このように蓄電池の収益を得る策とは、スポット市場から0.01円で電気を仕入れ、
それを26円、つまり仕入れ値の2600倍で売ることができる理屈となります。
「アービトラージ」とは、同じ品目の時間による価格差を収益に変えることをいいます。
10年近く前から、欧州で蓄電池などを利用したいわゆるVPP(仮想発電所)ビジネスや
起業がブームとなったのは、この収益構造を期待して注目されました。
系統用蓄電池の活用は、既存の発電事業者にとって最大の困りごとの1つ、出力制御対策にもなっています。
再エネ拡大が思うように進まない政府にとって願ってもない効果であります。
例にあげた九州電力管内では、2023年全体の出力制御率が8%を越えています。
せっかくの再エネ発電をむだにしたくないのは、脱炭素を進めなければならない政府も同様です。
系統用蓄電池のビジネスモデルの「kWh価値(卸電力市場)」が事業者自らのアクションによる利益創出なのに対し、
容量市場、需給調整市場は、政府による誘導、
つまり、資源エネルギー庁が求める役割を果たした時の報奨金のような制度です。
「kW価値(容量市場)」、「ΔkW価値(需給調整市場)」は、
年間や短期間内での需給バランスを取るために使える蓄電池を登録し、
送配電事業者などの指示を受けて充放電などを行うもので、
出力制御の緩和を含む需給バランスの達成を目指します。
蓄電池を所有する事業者は、基本的に登録と
実際のアクションの双方で対価を得ることができる仕組みです。
これらの各種の需給バランスの調整によって、
政府は今後さらに拡大する可能性のある出力制御を緩和したい考えであるため、
一定規模(10MW)以上の系統用蓄電池を充電もできる発電所として規定し、
機能させることに注力している現状です。
この目的達成のため、系統用蓄電池導入に対して、
2024年度予算での「再生可能エネルギー導入拡大に向けた系統用蓄電池等の電力貯蔵システム導入支援事業」などの
手厚い補助も設定されており、まさに、政府と民間がこぞって蓄電池の拡充を目指す、
ビジネスチャンスの構図がここにあります。
こんなビジネスチャンスを逃したくないですよね…?
では、すでにどんな企業が参入しているのでしょうか?
【東急不動産の進める系統用蓄電池事業】
事例(1)伊藤忠商事
蓄電池を保有するのは東急不動産であり、パワーエックスの蓄電池を使い、
システム構築の最適化に伊藤忠商事が参加し、
市場取引(kWh価値)と電力系統への充放電(kW価値とΔkW価値)で利益を出す構図となっています。
実際に、市場での充放電をどうするか、調整力などにどう当てるかなどが蓄電池の運用が事業性の鍵になるということです。
つまり、運用事業者(アグリゲーター)のパフォーマンスが重要なのです。
【JYSグループの進める系統用蓄電池事業】
事例(2)JYSグループ
JYSグループ3社の第一号となる3案件は、グリーン電力会社である、しろくま電力(旧:afterFIT社)との協業事業となります。
事業者は城洋、城洋商事、光遊社で、開発・設計、運用・管理は、しろくま電力(旧:afterFIT社)が担います。
なお、この3案件は東京都の系統用大規模蓄電池導入促進事業に採択されました。(2023年8月4日発表)
4月から実運用が開始された「長期脱炭素電源オークション」
発電施設の普及が進まない課題を解消するために、
上記右のように、長期的な収入を得られる制度が新設されました。
10MW以上の蓄電設備は発電所扱いとなるため、系統用蓄電池はここに入札できることになります。
ここで収入が得られれば、全体の事業性が確保されると、この春の約定価格に蓄電池事業参入者の注目が集まっている状況です。
経済産業省は、5月24日に開催した有識者会議において、系統用蓄電池の接続検討・接続契約の件数は、
直近1年間で約3倍に急増しており、今後も導入が進む見込みと公表しました。
系統用蓄電池の受付状況は、
2023年5月末時点の接続検討は1189万kW(11.89GW)、接続契約が112万kW(1.12GW)だったのに対し、
2024年3月末時点では
接続検討が3997万kW(39.97GW)、接続契約が331万kW(3.31GW)と、いずれも約3倍に増加しました。
再生可能エネルギー導入拡大に伴う調整力は、世界全体で2030年に2倍、
2050年には4.5倍になると予測されており、
そのうち蓄電池は、2050年に短期調整力の約3分の1以上を占めると発表されました。
【系統用蓄電池の接続契約状況】
系統用蓄電池の最大の課題とも言える導入コストは億単位の費用がかかるため
系統用蓄電池事業へ参加できるのは、現在時点で、資金力があり、将来的な投資としてお金が使える企業に
限られているようにみえるかもしれません。
出力制御の増加と系統用蓄電池には深い関りがあることはご存知でしょうか?
出力抑制とは、一般送配電事業者(発電所で生み出した電力を消費者に届ける役目を担う事業者)の指示により
発電事業者が太陽光発電所や風力発電所の出力を抑制することです。
出力抑制に対する補償はないため、発電事業者は売電によって得られたはずの利益が手に入りません。
要するに、出力抑制とはせっかく発電した再生可能エネルギー電力をタダで捨ててしまうことなのです。
出力制御は電力の需要と供給、つまり消費と発電のバランスを確保するためにあります。
対策としては、電力会社が様々な発電設備の出力を停止することで需要と供給をコントロールしています。
実際に、2021年度までは、九州電力だけが実施していた出力制御ですが、
2022年度以降は他の大手電力会社でも実施され始め、
2023年度には大幅増加し、電気に携わる業界ではニュースになっていました。
またさらに最新の発表では
2024年度も、昨年比で昨年の17億kwhより+7億kwh増加して
約24億kwh、約1.3倍ほどの「出力制御量増加」になるという見通しになっています。
電力不足も問題ですが、電力の供給量ばかりが多すぎるのも、問題があるということです。
出力抑制の原因、電気が余る理由としては、
電気には需要が高まるピークと、あまり電気が使われないオフピークの時間帯や時期があります。
太陽光発電で多くの電力が得られる時期に需要が少ないとなれば、電力は余るということです。
太陽光発電所が堅調に増加していることに加え、 足下では、電力価格の高騰を踏まえた節電、節約の影響もあると考えられています。
そして、出力抑制される発電所には優先順位(優先給電ルール)が定められています。
電力は可能な限り再生可能エネルギーを取り入れる方針、出力抑制が
1番先にかかるのは、一般送配電事業者(送配電を担う大手電力会社)が確保する火力発電等といわれています。
火力発電は、数ある発電方法の中では比較的、発電出力のコントロールが容易です。
火力発電を抑制した後、電力供給量が需要を上回る場合、一定のルールで出力抑制が行われます。
蓄電池の導入により、電力供給が安定し、再生可能エネルギーの利用が拡大することで、
二酸化炭素(CO2)排出量の削減に大きく貢献します。
日本は2050年までにカーボンニュートラル(脱炭素社会)をめざすと表明しているため、
再エネの有効活用を進めていかなければなりません。
それゆえ、出力抑制量の低減は大きな課題です。
経済産業省の対策としては、
需要対策として、揚水の最大限活用、蓄電池など制御可能な機器の導入拡大、 DRの推進として取り組んでいくと発表されています。
導入コストの課題をクリアできるのは、弊社のシェアリングシステム「分譲型 系統用蓄電池事業」導入で、
初期費用を抑え、より多くの企業が参入できるプランを採用可能にいたしました。
「系統用蓄電池」は、脱炭素実現のためには必要なシステムの1つであることは間違いなく、
収益性が見込めるビジネスとしても今後、需要拡大する事業と期待されています。
「分譲型 系統用蓄電池事業」についての詳細情報は…
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